NEGLEX の出発 - 金田・江川予想


1974年から1975年にかけて、秋田大学の金田昭彦さんと、 オーディオ評論家の江川三郎さんによって 、ケーブルで音が変わるという、 従来の電気音響工学の常識を覆す発見が行われました。 これは、音の違いのかなりの部分が、 充分な精度に達していたと信じられていた測定器にもかからない ものであるということをはっきりさせた点で、歴史的な発見です。 しかも、大変面白いことに、金田さんも江川さんも、 ケーブルによる音の違いの一部が表皮効果 によるものではないかという予想を提出しました。 私たちは、この予想を金田・江川予想と呼んでいます。この予想は、 オーディオでよく見掛ける、信じる以外に受け入れる途がない主張と違って、 実験と理論の対象になりうるという点で、特筆に値します。

NEGLEXの場合は、一貫して、この金田・江川予想 の検証と、それが成立する根拠を追求してきました。表皮効果というのは、 渦電流というより広い概念の一部ですが、普通のケーブルを オーディオ帯域で使う限り、その値は 極めて小さなもので、電気音響工学の常識としては、聞 こえるはずがないものです。そのため、他のすべてのメーカと研究者はこれ を否定し、音の違いを、測定の容易な非直線性 とか、あるいは理論では説明のつかない神秘的な発想といった、 他の要因に求めました。

しかし、我々は、注意深い実験と理論的研究を蓄積した結果、金田・江川予 想は正しいと判断していますし、NEGLEXと他のオ ーディオケーブルの最大の違いも、この点にあります。他のほとんどの製品は、 純度といった感覚に訴える概念や、理論的にナ ンセンスであることを証明できる発想に、その根拠を置いていますし、逆に、 NEGLEXの場合は、そういったものを信じていません。

NEGLEX の思想 - オーディオ・ケーブルの謎

我々が行った実験と理論的な検討は広範かつ莫大なもので、それはまた、 多くの部品メーカーの技術者、オーディオ技術者、 オーディオ愛好家にご協力いただいた結果でもありますが、そこから得られた結論は、


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	あるレベル以上のシステムと試聴者であれば、ケーブルを含む、あらゆる
	部品の渦電流によるインピーダンスの変化を、解像度の低下あるいは、
	情報量の低下として、識別できる
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というものです。

しかも、渦電流のような微少要因、つまり、測定にもかからない ような僅かな違いが聞こえる以上、従来無視される と思われていた、他の微少要因も判定可能なはずで、事実、機械的な振動 からくる微少なインピーダンス変化、導体や誘電体のかなり小さな電気特性の差、コ ネクタの構造や接触状態の差等、ありとあらゆるものが音に影響を与えていたことが 明らかになりました。つまり、従来の電気音響工学は、根本的な修正を余儀 なくされることになりますが、何がどう変わるのか、 究極の答を得た人は、まだ誰もいません。

実際、ケーブル以外の分野でも、渦電流インピーダンスを減らすことにより、大きな 効果が得られる等、従来無視されると思われていたことが、実際には大きな影響を与 えていた事実が次々に明らかにされてきましたし、その結果、かなりの進歩が得られ てきていて、問題は、決してケーブルだけの問題ではないことがわかっています。つ まり、ことオーディオに関する限り、音に無関係な要因はなく、何をやって も音は変わるわけで、ここに、オーディオ業界特有の詐欺的商品が多発する 理由があります。

しかし、何故、高度な電気計測器でもわからないような違いが、 人間には聞こえるのでしょうか。電気計測の場合は、伝送系の非直線性 周波数特性を基本にしています。非直線性の場合は、 入力と出力が比例しないということで、話しも簡単、測定も簡単ですが、周波数特性 の場合は、音の大きさと伝搬時間が周波数に無関係なら波形も変わらないという性格 を利用して、振幅と、伝搬時間(位相特性)が 周波数に無関係であれば、無歪であるという理論を足場にしていま す。

この理論そのものは、絶対的に正しいのですが、実際に 測定してみると、面白いことに気づきます。例えば、明らかに音が違うアン プなどの特性では、ほとんど同じ、あるいは、まったく違いがわからない という結果になりますし、一方、同じ音楽、同じ言葉として認識できるス ピーカやマイクロホンでは、これで同じ音がでるのかと思うほど違った測定 結果になるのです。しかも、それらが置かれる部屋とか、周囲の状況によ って、驚くほど変化します。

これは、とても面白いことですが、逆に、人間が測定器と同じように認識したとした らどうなるでしょうか。同じ人が話したとしても、場所や伝達手段が違うと、まった く別人と判定されてしまいそうです。ところが、人の場合は、同じ音源はかなり違っ た環境でも容易に同定することができますし、一方では、測定器では差がわからない ような、アンプの違いを、いとも容易に認識します。つまり、人間と測定器では、ど こかが原理的に違うのです。そして、この違いこそ、人類がこの 多様な環境で生き残ってこれた理由でもあります。

問題は、何が違うのかということですが、我々が得た結論は、情報を処理す るための仕組みの違いです。電気計測の場合は、あくまでも一次元 の情報処理を行います。つまり、音の波形を時間軸に沿って計測し、その データを元に周波数特性を求めます。時間軸の波形から周波数特性を求めるには、か なりの演算量が必要で、その微妙な変化を求めようとすると、誤差しか残らないとい う結果になります。

一方、人間のほうは、本質的に2次元、ないしは、3次元の並列演算系 になります。耳から脳までの情報処理・伝達システムはほぼ2次元ですし、 脳になると、3次元の処理を行います。このようなシステムを、コンピュータを含む 電気計測で実現するのは無理で、光を使った演算処理システム、つまり、 光コンピュータだと比較的容易に実現できます。これはまだ実用化が先の 話しになりますが、大切なことは、1次元の計測システムでは極めて困難な周波数特 性の僅かな違いが、2次元の演算システムでは極めて容易に解かるということです。 逆に、1次元のシステムで容易に認識できる性質の一部は、2次元のシステムでは鈍 感になる場合があります。

NEGLEXの場合は、まさにこの、電気的な測定にはかからな いけれども、人間のような並列演算システムでは容易に認識できるような特性を重視 するという思想になっているのです。具体的には、従来の電気音響工学で重視されて いた、周波数特性の大域的な特性でなく、局所的な特性 、つまり、周波数特性を顕微鏡で拡大して部分的に見たときの凸凹を問題 にするという意味です。数学的に見ると、周波数特性の高次の微分を小さく するような設計が行われていることになります。この点が、他のケーブルと は根本的に違う点です。

つまり、電気計測で得られた周波数特性の全体がどの程度似てい るかということではなく、周波数特性の局所的なパターン同志が どれだけ似ているかを問題にするというやりかたです。比喩的ないいまわしをすれば、 山全体の形がどのていど似ているかでなく、そこに育つ 個々の樹木がどれだけ似ているかを考えているという感じになります。

こんな発想は、NEGLEX独自のもので、他に例のないもので すが、私たちが今までに行ってきた、すべての実験の結果を、素直かつ無矛盾、明快 に説明できるのは、この解釈だけなのです。

NEGLEX の特徴 - 感覚と科学の融合

NEGLEXの場合は、人間から見た、


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	解像度情報量を高めること
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が唯一の目標ですが、これは純度信仰等とは無関係な、 科学的な目標です。何故かというと解像度の評価は、少し工夫すれば、か なり客観的に行えるからです。例えば、知らない楽曲、特に 多声部の音楽を写譜してみたり、苦手な外国語のヒアリン グをして、認識率を調べてみると、それがどんなものか、高度な音楽的訓練 なしでも、実感することができます。

そして、その実現の方法として、先にお話しした、周波数特性の高次微分の 最小化という、新しいアプローチを取っています。この実現のために、 2重円筒同軸構造(特許)といった新しい構造絶縁材料や導体材料の注意深い選択、 製造方法の工夫、保管から出荷までの 注意といった、ありとあらゆる点に注意を払っているのです。量産指向の製品ではあり ませんから、中には、名人芸的な生産、つまり、無理をしている部分もあります。

また、2803アッセンブリ品 のように、かなり極端な方針で作られた製品もあります。これは、ピン・ プラグ (RCAプラグ)のモールドという、本来、量産指向で開発された技術で、 一品料理の受注生産を行うという狂気に近いやりかたですが、これは、 プラグによる音質劣化を限界まで下げるための苦肉の策で、これ以上良い 解決策を見いだせなかったためです。市販されているピンプラグを評価してみるとす ぐわかりますが、豪華高価なものほど、解 像度が悪く、そういったプラグを使うと、2803の良いところが大幅 に失われてしまいます。

最近、何人かのお客様から、「NEGLEXを使って驚いた。こ んなに情報が増えるとは思わなかった。しかも、安い。」という、ご意見を頂きまし た。量産している電線と比べれば、決して安いとは言えませんが、安いという感覚は、 他の詐欺的商品とくらべての話しだと思います。ケーブルにかけるコストは、他の部 品やシステムとのバランスを考えなければなりません。一般ユー ザの立場としては、アンプ内部の部品を交換するというのは無理かもしれませんが、 1mのケーブルに何万円もかけるよりは、セット・メーカでは使わない、良質のコン デンサにお金をかけるのが、正しい選択です。

NEGLEX の商品ライン

利益追求のためというより、どうしても必要な人々へのサービス と研究の一部という性格が強いため、商品と呼べるかどうかわかりませんが、現在、 次のようなものが用意されています。過去には、もっといろいろありましたが、その ほとんどは製造中止になりました。今までに試作した製品の数は、1000点近くに なります。

ライン接続ケーブル

スピーカーを除く、機器間接続に使われます。もちろんアンプ内 部でも使えます。また、スピーカーで使えないわけではありません。


  1) 2497 - 67 pF/m, 43 mOhm/m  (75 Ohm)

	寿命の長い製品のひとつで、高品質の画像伝送にも使えます。

  2) 2803 - 108 pF/m, 160 mOhm/m (50 Ohm)

	最も解像度の高いケーブルです。ピンプラグによる劣化も明瞭にわかります
	ので、ピンプラグの接続は受注生産になっています。もちろ	ん、ケーブル
	単体での供給も可能です。詳細は単品カタログをご覧ください。このケーブ
	ルは、汎用性があって、スピーカーを除く、ほとんどの用途に使えます。

pF/m の単位が付いた数値はキャパシタンス、mOhm/m の単位が付いた数値は直流抵抗、 () 内の数値は特性インピーダンスです。これらの電気特性が必要な場合もありますが、 解像度の評価に対しては、何の役にもたちません。

スピーカー・ケーブル

ダイナミック・スピーカーのダンピング(音のないときの制動)に必要な直 流抵抗が低いため、スピーカーの接続に使われます。ただ、直流抵抗は解 像度に本質的な影響を与えません。


  1) 2477 - 15 mOhm/m, 550 PF/m  (16 Ohm)

	NEGLEXのもっとも古い製品のひとつです。

  2) 2804 - 590 pF/m, 94 mOhm/m  (15 Ohm)

	スピーカー・ケーブルとしては、異常な細さです。何故、こんなものを作っ
たかというと、スピーカーケーブルに求められる、低い導体抵抗と、低い渦電流損失
の間には、根本的な矛盾があって、この両方を満足するのは無理ですから、低い導体
抵抗は、メインアンプにフィードバック機構を入れることで確保し、低い渦電流損失
はケーブルが引き受けるという方針が最善だという判断です。

	つまり、低域はメインアンプ、高域はケーブルが、それぞれ分担して引き受
けることにより、総合的に良い特性を得るという思想なのです。具体的には、
「Fidelix」の「LB-4」という、メインアンプを前提にした製品です。

	これ以外の製品で使う場合は、プリ、メイン間を離して、メイン・アンプを
スピーカーのすぐ近くに置くことで、スピーカーケーブルの長さを減らすといった、
工夫が必要です。うまく使うと、非常に高い解像度が得られます。

配線材と特殊な製品

機器の内部のリード線として使われます。優れた導体と絶縁材料 が使われていますが、採算的な問題から、どうしても必要な方に 限り供給させていただいておりますので、できるだけ、ご注文をご遠慮いただきたい と思います。


  1) 2514 - 19/0.18 * 1.7 mm, 36 mOhm/m (0.48 mm^2)
  2) 2515 - 30/0.18 * 2.0 mm, 23 mOhm/m (0.76 mm^2)
  3) 2516 - 52/0.18 * 3.3 mm, 13 mOhm/m (1.3 mm^2)
  4) 2569 - 0.8 mm 裸銅線, 34 mOhm/m (0.50 mm^2)
  5) 2526PT - アナログ・レコード・プレーヤ用アーム・コード

() 内の値は、導体断面積、\fBmm^2は平方ミリメータを意味します。

ピンプラグとピンジャック

高価で見かけ倒しのものよりはましかもしれませんが、特に音質を考慮しているわけ ではありません。我々としては、2803用の受注生産品だけが、おすすめ できるピンプラグです。無駄の少ない、ローコストな製品になります。


  1) 7551 - ピンプラグ, 6 mm
  2) 7553 - ピンプラグ, 8 mm
  3) 7552 - ピンジヤック (シャーシ絶縁型)

ピンプラグのサイズは、カバーの穴に入るケーブルの最大外径です。

プロ(業務)用製品

MOGAMIブランドのプロ用オーディオ・ケーブルは、世界の重要な市場で その特性と品質が評価され、広く使われています。アナログとディジタルの両方に対 して、広範囲のワイヤ、ケーブルが用意されていますが、これらの詳細については、 下記の代理店にご照会ください。


  1) 日本

	エム・アイ・ティ(株)
	154 東京都世田谷区梅丘 1-33-9 モンド梅ヶ丘ビル 2F
	FAX: 03-3439-3877, TEL: 03-3439-3755

  2) アメリカ

	Marshall Electronics
	Post Office Box 2027 Culver City, CA 90231
	FAX: 310/391-8926, TEL: 310/390-6608

  3) その他

	下記にお問い合わせください。世界各地の代理店をご紹介いたします。

	MIT INC.
	MONDO-UMEGAOKA BLDG, 2F 1-33-9, UMEGAOKA, SETAGAYA-KU, TOTYO 154, JAPAN
	FAX: 03-3439-3877, TELEX: 2324787 MOGAMIJ, PHONE: 03-3439-3755

関連資料 - 情報サービス

モガミ電線では、他に類のない技術情報サービスを展開していますが、ここで触れた ようなオーディオケーブルの話題については、次の資料を用意してあります。ただ、 費用の点から、在庫がなくなったところで中止せざるを得ないと思いますので、どう しても読みたいという方だけが請求してくださるようお願いします。


	オーディオケーブルの謎(B5 版, 128 ページ, 領布価格 1000 円)

いくつかの雑誌に掲載された原稿をまとめて、加筆したものです。宣伝のための文書 ではなく、技術的かつ本質的な問題を雑談まじりに解説したものです。難解な技術文 書ではありませんし、評判も良いのですが、読みとおすには、ある程度の好奇心と集 中力が必要です。

この他、ワイヤ・ケーブルに関する、かなりの量の技術資料が用意されています。こ れらについては、必要になった時点で、エム・アイ・ティ(株)モガミ電線(株)の営業部門にご相談ください。特に難しい問題は、 モガミ電線(株)研究室あてにご照会いただいてもかまいません。

販売窓口

オーディオ店の利益に貢献するような製品ではありませんから、 NEGLEX製品の一般消費者向け国内販売窓口はありません。 一部の製品は秋葉原の三栄無線さんや 小柳出電気さん、大阪では テクニカルサンヨーさん等でも扱っていただいております。 どうしても入手先が見つからない場合は、下記にご連絡ください。


	モガミ電線(株)
	399-64 長野県塩尻市宗賀 469
	FAX: 0263-52-6565, TEL: 0263-52-3149

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